電気刺激療法の効果とは?脳梗塞後遺症に効果的な治療法
脳梗塞後遺症は患者のQOL(Quality of Life)に重大な影響を及ぼすため、リハビリテーションにおいて多角的なアプローチが求められます。その中でも、電気刺激療法(Electrical Stimulation Therapy)は筋力強化や神経の再生を促進する有望な治療法として注目されています。脳梗塞後遺症に対する治療法としての実践的なアプローチについて紹介します。
電気刺激療法とは
電気刺激療法は、筋肉や神経を電気的に刺激することで機能回復を促す治療法です。具体的には、皮膚に装着した表面電極を介して電気的なパルスを送ることで筋肉の収縮を引き起こし、筋力の維持や向上、麻痺の改善を図ります。低周波から高周波まで様々なパルス設定が可能であり、患者の状態に応じて最適なパラメータが選択されます。
リハビリテーションとの組み合わせで期待される効果
電気刺激療法はリハビリテーションと組み合わせることで以下の効果が期待されます
筋力強化
使用頻度が低下している筋肉を電気的に刺激することで、筋力の回復と維持をサポートします。特に下肢の筋肉に適用することで、歩行能力の改善が見込まれます。
神経再教育
電気刺激が神経可塑性を促進し、損傷を受けた神経回路の再形成を助けます。これにより、運動機能や感覚機能の回復が期待されます。
血流改善
電気刺激による筋収縮は局所血流を増加させ、組織の代謝を促進します。これにより、リハビリテーション後の疲労回復や筋肉痛の軽減が図れます。
脳卒中治療ガイドラインにおける位置づけ
日本脳卒中学会のガイドラインでも、電気刺激療法がリハビリテーションの一環として有効であることが示されており、特に筋力低下や麻痺の改善に対する有効性が認められています。
電気刺激療法と禁忌症状の注意点
電気刺激療法を安全かつ効果的に実施するためには、禁忌症状に対する理解が重要です。電気機器によって異なる場合があります。使用する機器の取り扱い説明書を読みましょう。
禁忌対象者
- 心臓ペースメーカーなど体内に医療機器を埋め込んでいる人
- 悪性腫瘍がある人、感染症がある人
- 皮膚知覚障害の人
- 幼児または意思表示ができない人
禁忌部位
- 心臓の上
- 目
- 感覚が損なわれている部位
- 頸動脈洞上
- 静脈や動脈の血栓症または血栓性静脈演の領域近く
- 体内に金属などを埋め込まれている部位
家庭用電気機器の使用は?
家庭用電気機器を用いても有効な効果を期待できます。
しかし電気刺激の「強さ」や「部位」「時間」の設定が必要ですので、専門家の助言が必要になります。
「人差し指の第2関節を伸ばしたい」と思い、過度な出力と決められた以上の時間をかけて行う人がいました。電気刺激のやり方を拝見しますと、人差し指のMP関節が過伸展を起こしていたということがありました。
効果がある分、使用方法が適切ではないと思ってもみない症状が出てくることがあります。
家庭用電気刺激を使用する場合、医師や担当療法士に相談しましょう。
歩行能力や上肢機能の改善効果
電気刺激療法は下肢の筋肉、特に足首の動作を電気的に刺激することで、歩行パターンの改善やバランスの向上が期待されます。また、上肢の機能回復にも効果があり、ADL(日常生活動作)の自立度向上に寄与します。
痙縮
肘や手指の痙縮に関しては振動刺激を行い、その後、低周波治療器を用いながら川平法リハを行うと効果が発揮されます。
肩の亜脱臼
肩の亜脱臼に対して電気刺激は有効であると報告があり、川平法では電気刺激を与えながら自動運動にて筋収縮を促していきます。
痛みの緩和
痛みに対しても低周波治療器は有効です。電動刺激でも緩和は可能です。
患者様の状態に応じて使いわけしていきます。
下肢の運動機能
下肢の運動機能を向上させる上で有効です。
例えば前脛骨筋に低周波治療器のパッドを貼付し電気刺激と運動療法(川平法)を同時に行うことで足関節の背屈動作を促せます。
また歩行能力を向上させる上でも有効であり、低周波治療器と歩行訓練と併用して行っていきます。
電気刺激療法は筋肉を刺激することで、歩行パターンの改善やバランスの向上が期待されます。
まとめ
脳梗塞後遺症のリハビリテーションにおいて、電気刺激療法は重要な治療補助の一つです。医学的根拠に基づく効果的な利用と禁忌症状への注意を払いつつ、個々の患者に最適な治療を提供することで、身体機能の改善につながっていきます。医療従事者としては、電気刺激療法の適用範囲や技術的な詳細を理解し、患者にとって最善の治療を提供することが求められます。また、当事者様が家庭で使用する場合は、医師や担当の療法士に相談すると良いでしょう。